蜂の子を調理する前の下処理の方法とは?

滋養強壮をはじめ、幅広い効果が期待できる蜂の子には、豊富な栄養素が含まれており、海から遠い山間部の地域を中心に、古くから貴重なタンパク源として食べられてきました。
現在でも蜂の子は、佃煮や甘露煮などに加工されて販売されるほか、自宅で調理する食材としても利用されています。
蜂の子の旬の時期には産地や通販で未加工の蜂の子が購入でき、それを自宅で調理する場合には、より素材をおいしく食べるために、あらかじめ下処理しておくのがおすすめです。
この記事では、蜂の子を自宅で調理する前の下処理についてご紹介します。

蜂の子の内臓を取っておく理由とは?

蜂の子とは一般に蜂の幼虫やさなぎを指しますが、ほぼ成虫の個体も混ざっていることがあり、成長段階がさまざまなものをまとめて呼ぶ場合もあります。
このうち幼虫の体の中心には、『背わた』と呼ばれる黒く大きな筋状の内臓部分があり、中には食糧として与えられた昆虫の殻や、幼虫の排泄物が含まれています。
そのままでは食感が悪いうえ苦みなどの独特のクセがあるので、取り除いたほうがよりおいしく食べられるのです。
蜂の子の調理法といえば、『へぼ飯』と呼ばれる炊き込みご飯や、佃煮などの濃い味つけをする保存食が知られていますが、揚げ物や炒め物も挙げられます。
特に素揚げやバター炒めなどのシンプルな調理では、素材の味が際立つため、手間を惜しまずに幼虫の内臓をあらかじめ取っておくのが推奨されています。
また、内臓部分には雑菌や寄生虫が潜んでいる可能性があるので、事前に取り除く下処理をおこなったほうが安全性が高くなるとされています。
味や食感、安全性などの側面から、蜂の子は下処理をしておくのが大切といえます。

蜂の子の下処理の方法について

蜂の子を巣から取り出す

巣に入った生の蜂の子の場合は、巣から一匹ずつピンセットなどで取り出します。
ミツバチに限らず蜂の子はやわらかいため、潰さないように丁寧に取り出しましょう。
さなぎが入っている部屋は、入り口が白い膜で覆われているので、はさみやカッターで切ってから巣を逆さまにして落とすと楽に取り出せます。
また、さなぎは幼虫とは異なり動かず、非常にやわらかいため、ピンセットを使って取り出そうとするとつぶれてしまいます。
巣から取り出した蜂の子には巣の破片が付いているので、流水や塩水で洗い流してから、ザルに上げたりキッチンペーパーで拭き取ったりして水気を切ります。
蜂の子には幼虫やさなぎ、ほぼ成虫の姿をした羽化直前の個体など、さまざまな成長過程のものが含まれています。
中でも、蜂の子の味や食感に影響の大きい幼虫の下処理が重要となるのです。

幼虫の内蔵の取り出し方とは?

前述のように、幼虫の体の中心には内臓部分である背わたが通っているため、下処理しないで食べると、消化管の中に入っている異物で食感や味が悪くなってしまいます。
それをなくすために、一度下ゆでしてから一匹ずつ手作業で内臓を取り除いていきます。
蜂の子の内臓を取り出す際、生のままで無理に引き出そうとすると、体がつぶれたり頭だけがちぎれたりしてしまいます。
そのため、軽くゆでてから取り出す方法が推奨されているのです。
生の状態の蜂の子は半透明をしていますが、ゆでると白く変色するため、色の変化を目安にお湯から上げましょう。
そして、蜂の子の肛門の少し上の背に切り込みを入れてから、体を軽く押して内臓を少し出します。
飛び出した内臓をゆっくり引き出すと、きれいに取り出すことができます。
また、10分ほどゆでたりフライパンで炒めたりしてよく加熱すると、内臓部分が幼虫の体を突き破って飛び出てくるため、調理の過程で取り除いてもかまいません。
消化物を取り出してみると、ゆでた幼虫の体長の1/4~1/3ほどあり、下処理する前の半分くらいの容積になってしまうため、内臓部分がいかに蜂の子の食感や味を損なっているかが目視できるでしょう。

さなぎの下処理について

なお、幼虫からさなぎになる『前蛹(ぜんよう)』という状態の蜂の子は、消化器官の内容物をすべて出してしまうので背中が白く、内臓を取り除く必要はありません。
蜂を含め、さなぎになる昆虫は、幼虫がさなぎに変化する時点で体内から排泄物や余分な水分をすべて体外へと排出します。
さなぎになる段階でこうした内容物が邪魔になってしまうために、蜂の幼虫は生涯に一度この排泄をおこないます。
このため、幼虫には排泄物などが入った内臓部分があり、さなぎには存在しないのです。
さなぎをゆでると、目が黒から茶褐色に変色し、少し硬くなるため扱いやすくなります。
さなぎの中でも、体の色が真っ白でやわらかなものと、少し茶色く硬くなり始めたものとがありますが、白くてやわらかいほうがうまみも強く、食感もよいとされています。
そのためさなぎを食べる場合には、少しでも変色したものは省いたほうがよいという声もあります。
幼虫やさなぎ、ほぼ成虫の姿をした固体は、それぞれ食感や味が異なるため、分けて調理して味の違いを楽しんでもよいでしょう。
蜂の子の料理をよりおいしく食べるには、丁寧な下処理をしておくのをおすすめします。