蜂の幼虫やさなぎである蜂の子は、良質なタンパク質など豊富な成分を含む栄養価の高い食品で、日本では古来、山間部の地方を中心に食されてきました。
現在はサプリメントで摂取するほか、素材を加工し高級珍味としても扱われており、蜂の子の産地ではおみやげ品の主流製品として販売され、通販でも購入できます。
未加工の蜂の子が手に入れば、自宅でも簡単に調理することができるため、この記事では、蜂の子をおいしく食べるための代表的な3つの調理法についてご紹介します。
蜂の子を調理する前には下処理をおこなう
後述する蜂の子料理をおいしくつくるには、蜂の子の下処理が重要となります。
蜂の子は幼虫やさなぎ、羽化直前の成虫とほぼ同じ姿をしたものなど、さまざまな成長段階のものをすべて指しますが、中でも幼虫の段階は内臓部分が残り食感が悪く、苦みなど味にクセがあることで知られています。
そのため、下処理をあらかじめおこなっておくことで、よりおいしくいただけるのです。
蜂の子の下処理の方法とは?
蜂の子のうち、幼虫の体の中央には『背わた』と呼ばれる黒く大きな内臓部分が通っており、その中には食糧として与えられた昆虫の殻や幼虫の排泄物が含まれています。
この内臓が食感を悪くしたり、苦みなどの原因となったりする部分のため、例外的に好んで食べる場合もあるものの、基本的には取り除くのが蜂の子料理の味を保つとされています。
幼虫の内臓を取り除くには、軽く下ゆでしてから一匹ずつ手で取り除く方法が一般的です。
生のままの蜂の子は半透明をしていますが、ゆでると白く変色するため、これを目安にお湯から引き上げます。
ゆですぎるとお湯の中で蜂の子の体が破れてしまう場合があるので、ゆですぎには注意しましょう。
そして、下ゆでした蜂の子の肛門の、少し上にある背中側か、頭の部分に切り込みを入れてから、軽く体を押して内臓を少し外に出します。
それをゆっくり引き出すと、内臓がきれいに取り除けます。
ほかには、10分ほどゆでるか、フライパンで炒めるかしてよく加熱すると、内臓部分が体外に飛び出してくるため、それから取り除く方法もあります。
蜂の子の生食は避けるのが無難
蜂の子の産地では、採ったばかりの蜂の子をそのまま食べることもおこなわれてきましたが、昆虫の体内には雑菌や寄生虫などが潜んでいる可能性もあります。
安全性の側面から蜂の子の生食はおすすめできないため、必ず加熱したものを食べるように注意しましょう。
蜂の子のおいしい食べ方とは?
揚げ物・炒め物
蜂の子の調理法でもっともシンプルなのは、素材本来の味を楽しめる揚げ物や炒め物が挙げられます。
蜂の子の揚げ物には、何もつけずにそのまま揚げる素揚げ、片栗粉や薄力粉をまぶしてつくる唐揚げ、しょう油やみりんで漬け込んでから揚げる竜田揚げなどがあります。
また、炒め物ではバターとしょう油で香ばしく仕上げるバター炒めが代表的で、カシューナッツなどナッツ類の風味に例えられる蜂の子の甘みが楽しめる調理法として人気となっています。
油で炒めたら塩・コショウのみで味つけしたり、すりおろしたニンニクでソテーにしたりするのも、簡単でおいしい食べ方として一般的です。
佃煮・甘露煮
蜂の子の調理法といえば、佃煮や甘露煮がよく知られています。
蜂の子をしょう油と砂糖で煮る調理法は古くからおこなわれており、現在でも佃煮や甘露煮は缶詰やビン詰めに加工され、産地のおみやげ品の主流として流通しています。
佃煮は江戸時代の1850年に著された『想山著聞奇集(しょうざんちょもんきしゅう)』という文献に記されている伝統料理でもあります。
未加工の蜂の子が入手できれば、しょう油と砂糖、みりんと料理酒で煮付けるだけで自宅でも簡単につくれます。
また、しょう油やみりんに水飴を加え、照りを出すように煮込んだ甘露煮は、飴煮とも呼ばれるカラメル色の甘辛い味つけに仕上げた保存食です。
佃煮とは異なり、水飴を使用するのが甘露煮の特徴ですが、蜂の子に関しては両者の違いが曖昧で、缶詰など加工食品の多くは『蜂の子佃煮(甘露煮)』のように併記される場合が多くなっています。
いずれもおにぎりの具材や、ご飯にのせたりおつまみにしたりするほか、『う巻き』のうなぎの代わりに卵に包んで食べたりするのもおすすめです。
炊き込みご飯
蜂の子を具材に使った炊き込みご飯は、蜂の子を食べる習慣のある地域ではごく一般的な調理法です。
岐阜県や静岡県、愛知県の一部の地域では、蜂の子として主に食用にするクロスズメバチを『へぼ』と呼んでおり、それを炊き込んだ『へぼ飯』を食べる習慣があります。
クロスズメバチの蜂の子は、蜂の活動や繁殖期がピークを迎える秋が旬の時期で、産地ではこの時期にへぼ飯をはじめとする蜂の子料理をふるまったり、未加工の蜂の子の販売がおこなわれたりするイベントが開催されています。
自宅で蜂の子の炊き込みご飯をつくるには、一般的なつくりかたや材料と同じように、野菜やキノコ類、油揚げなどと一緒に炊き込めば簡単にできあがります。
また、蜂の子以外の具材を使用せずに、蜂の子をしょう油と砂糖で炒るように煮上げてから炊きたてのご飯に加えるへぼ飯も、自宅の炊飯器でつくって食べられるので、試してみてはいかがでしょうか。