豊富なタンパク源として知られる蜂の子には、幅広い健康効果や美容効果が期待できる一方、蜂という名前の響きから、刺されたときのような毒の悪影響を心配する人も少なくないといいます。
この記事では、蜂の子の摂取にあたり毒の心配はないのかについてご紹介します。
蜂の子そのものに毒の心配はない
結論からいうと、蜂の子そのものに毒は含まれていません。
蜂の毒は毒のうと呼ばれる袋状の器官に蓄積されていて、獲物を攻撃する際などに針から分泌されます。
この毒を持つ針は、産卵管という生殖機能が変化したメスのみが持つ武器で、蜂に刺されて毒性成分を含む物質が針を経由して体内に注入されることで、強い痛みが起こったり患部の周りが熱を帯びたり腫れ上がったりするのです。
蜂の幼虫やさなぎである蜂の子は未熟なので生殖機能ができていなく、獲物の確保や敵の攻撃をおこなうこともありません。
そのため、食べても毒による悪影響はなく、蜂に刺されたときの症状が現れる心配もないのです。
蜂の毒とはなにか?
蜂の子を食べる際に不安になってしまうのは、蜂の持つ毒が主な原因といえるでしょう。
ここでは、そもそも蜂の毒とはどんなものなのかについてご紹介します。
蜂毒とは?
一般にミツバチやアシナガバチ、スズメバチなど、人を刺すこともある種は人家に巣をつくってしまうため、駆除の対象となります。
その理由は、獲物や人を攻撃するときに使う針の根元にある毒のうに、いわゆる蜂毒がためられているからです。
痛みやかゆみを引き起こす成分や、赤血球を破壊する成分、神経系に作用する成分など様々な成分が合わさり、刺されると高い確率で体に影響があります。
蜂は針で人を刺すかどうかで種類が分かれる
蜂にはすべて蜂毒が備わっていると誤解されがちかもしれませんが、人を刺す種類とそうでない種類とに分かれています。
生物学的な分類では、いわゆる『刺す蜂』とは細腰亜目という種類に属するミツバチやスズメバチ、アシナガバチが当てはまり、種目の名のとおり腰が細くくびれているのが特徴です。
このうち、ミツバチの針は構造上、一度刺すと抜くときに自身の内臓ごとちぎれて死んでしまうため、ミツバチにとって刺すことは最終手段であり、めったに刺すことはありません。
一方の『刺さない蜂』とは、広腰亜目という種類のハバチやクキバチなどが該当し、腰にくびれがある細腰亜目に対して腰幅が広く、くびれがありません。
産卵管としてのみ使用するために針を持っているものの、針の形をしていても毒を含んでいないうえ、人を攻撃して刺すこともなく、種類によっては針の形状でないものも存在します。
広腰亜目は蜂の原始的な姿と考えられており、蜂の進化に伴って、産卵管を種の保存だけでなく狩りに用いる武器として利用する細越亜目のような種類が現れたともいわれています。
針と毒を持つのは細腰亜目のメス蜂
刺す蜂である細腰亜目の蜂は、産卵をおこなったり、働きバチとして巣を守ったりする役割があるメス蜂だけが産卵管を持ち、攻撃手段として針や毒を備えています。
一方、オス蜂の役割は、女王バチに産卵をおこなってもらい子孫を残すことなので、産卵管が変化した針も毒も持っていません。
そもそも蜂の子は蜂が孵化する前段階の幼虫やさなぎをいい、オスは無精卵、メスは有精卵として生まれて一緒に巣の中で成長します。
性別は卵で産みつけられたときのまま、成長に従って変化することはなく、オス蜂として生まれた蜂の子は産卵管を持つことがないため、毒を蓄えることもないのです。
蜂毒は治療にも利用される
蜂に刺されることで蜂毒に含まれる成分が皮膚や血管に直接作用するのは危険を伴うものの、食用として摂取したり、治療に利用されたりする場合もあります。
中でも、蜂毒を治療に用いる『蜂針療法』には、ミツバチの毒のうに蓄積されている0.02mgの毒液が利用されています。
ごくわずかの蜂毒を体内に注入することにより、人体の免疫力を引き出し、痛みや可能を軽減する目的で、古代エジプトやバビロニアにおいて紀元前2000年ごろからおこなわれていたといいます。
また、中世ヨーロッパでは蜂針療法をリウマチの治療に用いていたとする説もあります。
この療法に用いられるのはセイヨウミツバチの、羽化してから20日を過ぎた働きバチの蜂毒で、日本では1920(大正9)年ごろに始まりました。
現在では日本や中国を中心に、台湾やフィリピン、インドネシアやエジプト、イギリスやドイツ、アメリカなど世界各国でも蜂針療法がおこなわれており、4000年の歴史を持つ代替療法として人体の健康に役立てられているのです。