蜂の子は長野県や岐阜県などの山間部を中心に、古くから日本各地で貴重なタンパク源として食用にされてきた歴史があります。
現在でも上記のような産地では、蜂の子を使った郷土料理が親しまれているほか、一般の家庭でも簡単に調理できる身近な食材の一つとして扱われています。
蜂の子はさまざま栄養素を豊富に含む、安全性の高い食品ですが、その名前から蜂に刺された毒による悪影響などを連想する人も少なくないでしょう。
そこでこの記事では、食材としてだけでなく、サプリメントの原材料にも使用される蜂の子の安全性についてご紹介します。
蜂の子の安全性について
蜂の子はバランスのよいアミノ酸で構成されたタンパク質や、各種ビタミン、ミネラル類や脂肪酸などを含み、主に滋養強壮や疲労回復などに有効として利用されます。
約2000年前の中国で著された薬学書には、不老長寿の効能があり、長期に服用しても無害である『上品(じょうほん)』という最高位の薬として記されているほど、古来その効果や安全性の高さが評価されていたことが伺えます。
摂取による副作用はある?
蜂の子をサプリメントなどで摂る場合、一日の摂取目安量の記載はあるものの、明確な摂取量は決められていません。
サプリメントとは健康の維持・増進に役立つ、特定の成分を濃縮した健康食品のため、形状こそ錠剤やカプセルでつくられ医薬品と似ているものの、まったく別物です。
そもそも副作用とは、医薬品の使用に伴って生じる反応であり、かつ該当する医薬品となんらかの因果関係が存在することを意味する言葉です。
採取した蜂の子を原材料に利用するサプリメントは健康食品なので、蜂の子の摂取による副作用は存在しないといえます。
また、蜂の子が含む多種多様な成分には、幅広い健康増進の効果が期待できます。
これらの含有成分を医薬品としてでなく、副作用が起こり得ない食品として摂取できるのが蜂の子の大きな特色なのです。
毒による悪影響の心配はない
冒頭で触れたように「蜂=毒がある」というイメージが強く、その幼虫やさなぎである蜂の子を食べるのに抵抗がある人も少なからずいます。
とはいえ、結論をいうと蜂の子自体に毒は含まれていないので、食べても悪影響はないのです。
スズメバチなど人を刺す蜂の毒は、『毒のう』という袋状の器官に蓄積されており、獲物を捕ったり襲ったりする場合に針から分泌されます。
毒を持つこの針は、産卵管という生殖器官が変化したメスだけに備わった武器で、実際に刺されて毒性成分を含む物質が針で注入されることで、強い痛みや患部の腫れ・発熱などが生じるのです。
成長段階が未熟な蜂の子には生殖器官ができていないので、獲物の確保や敵の攻撃をおこなうこともなく、毒による悪影響の心配もありません。
蜂の子の甘露煮などの加工品や、サプリメントの原料として主に使用されるのは、オスの幼虫であることがほとんどです。
働きバチなどメスの蜂とは異なり、ローヤルゼリーなどの生産や幼虫の生育・保護の役割がないうえ、成長しても産卵管に変化する器官を元から持たないので、安心して摂取できます。
なお、体内に毒性物質を持つ蜂の成虫を食用にする地域もあり、その際には焼酎に漬けたり高温で加熱したりする処理によって無毒化してから摂っています。
仮に体内に毒が残った成虫を食べても、その成分はアミン類や低分子ペプチド類などアミノ酸で構成された化合物のため、口から摂取すると消化液で分解されてしまい、毒性を発揮できないのです。
アレルギーや喘息など体質によっては注意が必要
上記のように、蜂の子には副作用の存在や毒による悪影響の心配はないものの、体質によっては注意を要する場合があります。
代表的なものには、過去に甲殻類でアレルギー反応を起こした経験のある人や、喘息を持つ人が挙げられます。
エビやカニなどの甲殻類だけでなく、イカやタコなどの軟体動物にも『トロポミオシン』というタンパク質の一種が含まれており、この成分がアレルゲンとなって反応が現れると考えられています。
トロポミオシンは蜂などの昆虫にも含まれており、甲殻類が含む成分の構造と似ているため、甲殻類アレルギーでできた抗体が蜂の子の含有成分にも反応してしまう可能性があるのです。
また、喘息を持つ人の場合も、ハウスダストの中のダニなどに含まれるトロポミオシンに対する抗体が、蜂の子のタンパク質成分に反応して発作を起こす恐れも考えられます。
過去の甲殻類アレルギーの経験や喘息が、蜂の子の摂取によるアレルギー反応を招く原因とは断定できないものの、未然に防ぐには摂取を避けるのが無難といえます。
残留農薬などの確認を忘れずに
蜂の子の含有成分に問題がなくても、採取される環境面などで品質の安全性に問題が生じる場合があります。
蜂の子は自然から採れる食品のため、採取される土地での農薬散布による汚染や、化学工場が付近にあるなどで土壌汚染があった場合、その地域で採れた蜂の子にも薬品が混入している可能性が高まります。
市販の蜂の子サプリメントの中には、廉価な外国産の原料の粉末を輸入・製造しているものもあり、養蜂に使用された薬品や農薬が残っている場合があるため、購入時には産地の確認を怠らないことをおすすめします。
蜂の子製品を販売しているメーカーのHPなどで、原材料に薬品や農薬の混入の検査を実施しているかをきちんと確認すると、安全性の高い商品が購入できるでしょう。