滋養強壮や疲労の回復、耳鳴りの改善などにも効果的な蜂の子は、豊富な栄養成分を含む健康食品として知られていますが、年間を通じて同じように採れるわけではありません。
自然から採れる農作物や魚介類などと同じく、子がたくさん生まれる時期が決まっていて、個体数も栄養価も豊富になる、いわゆる『旬』が存在します。
蜂の種類によって異なるものの、基本的に食糧が豊富になる時期が蜂の子の旬であり、特に未加工のものを購入する際には、旬を意識するとおいしくて栄養価も高い蜂の子が食べられるのです。
この記事では、種類ごとに異なる蜂の子の旬についてご紹介します。
スズメバチなど肉食性の蜂の子の旬は秋
蜂の子としてもっとも流通量の多いクロスズメバチなど、肉食性の蜂の子は9~10月の秋に旬の時期を迎えます。
6~7月頃から、蜂の巣を守り大きくする働きバチが羽化し始めると、巣の拡大が本格化していき、9~10月の秋には繁殖期がピークになって個体数も多くなります。
スズメバチの主な食糧はクモやガなどの昆虫で、秋にはこれらの食糧が豊富になり、幼虫にも十分な栄養を与えられるため、蜂の子の栄養価が高くなるうえ、味もよくなるとされているのです。
秋はまた、次の世代の新しい女王バチとオスの蜂が育成される時期でもあり、特に新女王バチの幼虫は、ほかの働きバチやオスの蜂の幼虫に比べ体長が3倍以上あり、越冬に備えて多くの脂肪分を蓄えています。
スズメバチは食糧がもっとも豊富になる秋頃に合わせて巣を拡充するため、栄養分を多く蓄えた個体数も増えるこの時期が、肉食性の蜂の子の旬といえます。
スズメバチの生態について
繁殖期である秋が終わると、巣の活動を終えて女王バチは越冬のために冬眠しますが、それ以外のメスの働きバチはすべて秋までに死んでしまうため、冬を越えることができません。
春になり冬眠から覚めたスズメバチの女王は、自分の好む場所に新しい巣をつくるための準備を単独で始めます。
なお、冬から4月頃まではスズメバチがもっともおとなしく、刺されるなどの人的被害が少ない時期でもあります。
その後女王バチが産卵し、初夏にメスの働きバチが生まれると、それらが巣を拡大して守るために活動を始めます。
巣の規模が大きくなるにつれ、女王バチは外へ出ることはなくなり、働きバチの攻撃性も増していき、もっとも興奮しやすく狂暴になるのは、繁殖期のピークを迎える8~10月の間です。
この時期の働きバチは巣の内部の幼虫を守るため、近づいてくる相手に対し強い攻撃性を示すのです。
また、秋以降を境に、次の世代を担う新しい女王バチとオスの蜂が巣から飛び立っていくため、巣は徐々に活気を失っていき、最長でも12月までにはすべての巣が活動を終えます。
旬のスズメバチの蜂の子を取り入れるには?
上記のような生態により、肉食性の蜂の子が採取できるのは夏から秋の終わりにかけての時期となりますが、真夏に採取された蜂の子は秋の旬に採れたものと比べて脂肪分が少なく、味が落ちるといいます。
サプリメントなど蜂の子の加工食品は、多く採れる間に大量に加工しておくため、年間を通して品質や栄養素は確保されていると考えられます。
とはいえ、未加工の蜂の子を選ぶ際には、味や栄養価、値段にも差が現れるため、旬を知っておくとよいでしょう。
スズメバチの蜂の子は、通販や産地直売などで購入でき、オオスズメバチなど大型の蜂の子は、主に宮崎県や鹿児島県の山間部で採取されています。
旬の時期は採取する時期が限られているため、販売数も自ずと限定されるので、9~10月頃に販売先の入荷時期を確認するのが推奨されています。
ミツバチなど草食性の蜂の子の旬は春
ミツバチなど花粉や花蜜を食糧とする種の場合、4~6月頃が蜂の子の旬となり、特に食糧が豊富になる6月頃に個体数がもっとも増加します。
主に蜂の子として食用にされるオスの蜂はこの時期にしか生まれないのも、ミツバチの特徴です。
生殖活動のために、ローヤルゼリーやハチミツなど栄養価の高い食糧を多く食べたオスの蜂の子は、豊富な栄養素を含み味も優れているとされています。
ミツバチの生態について
ミツバチはスズメバチとは異なり、巣にいるすべての蜂が越冬をおこなうのが特徴です。
冬眠するのではなく、全員で密集することで体温を上げて巣の内部の温度を保ち、寒さを防ぎながら春まで耐えるのです。
2~3月頃には活動を再開し、女王バチが産卵して働きバチの数を増やしていきます。
越冬に備え、巣に花蜜を集める活動は5~8月頃の夏場におこなわれ、寒くなる11月頃にはミツバチは1年の活動を終え、越冬に入ります。
ミツバチは夏の盛りになると活動が低下するものの、気温が下がる9月頃に秋の花が食糧となるため、再び個体数が増え始めます。
繁殖期のピークである6月ほど数は増えず、主に蜂の子に利用されるオスの蜂もいないこの時期は旬とはいえないため、ミツバチの蜂の子は春が旬といえるのです。
旬のミツバチの蜂の子を取り入れるには?
ミツバチなど草食性の蜂の子は、春に食糧となる花蜜や花粉が豊富に採れるため旬を迎えるものの、肉食性の蜂の子に比べてやわらかく、壊れやすいので流通量は少なくなります。
養蜂場で採れたときのみ、ミツバチの蜂の子が販売される場合には、おおむね春がその販売時期となるといいます。
各養蜂場によっていつ販売されるか不定期であり、数量も異なるため、旬を迎える時期になったら養蜂場が発信する情報を確認するのが推奨されています。